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第7回「ゲームは最先端の技術が詰まったインターフェースの遊び」株式会社CINRA テクニカルディレクター 濱田 智氏

2016/04/06

GameWithのビジョンである「ゲームをより楽しめる世界を創る」ための活動のひとつとして、様々な分野の第一線で活躍する方々にゲームから学んだことについて語っていただく「私のゲーム履歴書」。

第7回目は、今最も勢いのあるクリエイティブカンパニー、株式会社CINRA テクニカルディレクター濱田智氏にお話を伺いました。

濱田氏はCINRAでは、早稲田大学やTOKYO FMなどのWEBサイト制作に携わる一方、プライベートではdrawing4-5というユニット名で音楽活動もしていらっしゃる多才な方です。

濱田氏の人生に大きく影響を与えたゲーム「MOTHER」のエピソードや、WEB制作者の視点からゲームに対する考えについてお話しいただきました。

妻との出会いは「MOTHER」

僕は任天堂で育った世代なので、最初にプレイしたゲーム機はファミコンでした。

父親と弟もゲームが好きで、特に弟は溢れかえったゲームソフト用にトランクルームを借りていたくらいのゲーマーでした。ドラクエ4が出た当時、どこも売り切れだったしそもそも貧乏なので、中古が出るまで待つしかないなと諦めていたのですが、父親が「歩いていたらたまたま半額以下で売っていた」と言い訳しながら発売日に買ってきたんです。今でも真相はわからないのですが、半額以下というのは絶対にうそだったと思っています(笑)


ゲームを自由に楽しめる環境で、最も大きく影響を受けたゲームは、糸井重里さんがゲームデザインを手掛けた「MOTHER」。

妻との出会いも、当時勤めていた会社の同僚から「MOTHER好きの女の子がいるよ」と紹介されたのがきっかけで、初対面の妻からの最初の質問が「濱田さんはFF派なんですか?それともドラクエ派?」というもの。

「ドラクエ派」って答えたら「私のまわりで今までドラクエ派だった人はいない。私もドラクエ派。」と話が盛り上がり、仲良くなったんです。

今でもMOTHERは妻も僕も好きなゲームなので、息子に主人公のコスプレで赤いキャップ、ボーダーのTシャツを着せて下北沢のヴィレッジヴァンガードに連れていったら、お客さんが騒然としていました(笑)

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小学生の時にプレイしたMOTHERの印象は「ちょっと心に引っかかるゲームだな」というくらいのものでした。しかし、高校生になり、スーパーファミコンで発表されたMOTHER2をプレイした時、そのストーリーの奥深さに衝撃を受けました。

MOTHER3も心待ちにしていたのですが、一度開発が頓挫してしまい、発表されるまでに12年も待たされたので、発売日は震えながら買いにいったことを覚えています。子どもが生まれた時と同じくらい興奮しましたよ(笑)

出勤前に渋谷のTSUTAYAで受け取ってから、満タンに充電したゲームボーイアドバンスを持ってサンマルクカフェに行き、そこで3時間くらいプレイしました。

冒頭で、主人公の名前と一緒にその父親、母親、双子の弟の名前を決めるのですが、ちょうど4人家族だからと自分の家族の名前にしてしまったものだから、ストーリーと自分の家族が重なってしまったんです。

今までゲームをプレイして泣くことなんてなかった僕が、MOTHER3のラストでは嗚咽をあげて泣いてしまい、これはとんでもなく心を揺さぶられるストーリーだなと感心しました。

ゲームは、きちんと体験しておかないといけない

現代社会において、ゲームはどのような役割を果たしているのかということを、しつこいぐらいよく考えます。

MOTHERが発表された当時、糸井重里さんが「グラフィックはあまり良くないけれど、音楽はとにかくいいから聴いてくれ」といったようなことをおっしゃっていたのですが、むしろそのグラフィックがあったからこそ、MOTHER2は素晴らしいゲームになったと思うんです。

MOTHERのグラフィックは、当時のFFのようにピクセルコンシャスな美麗さを誇るものではなく、隙間の多いドット絵で、だからこそデフォルメの重要性を学ぶことができるお手本のようなゲームでした。

どこまでディテールに寄り添うか、あるいは切り捨てるのかというデザインにおけるバランス感覚は、その後の仕事にとても役に立っています。

日々高画質で表現性の高い3D表現が誕生している一方で、ドット絵のゲームに根強い人気があるというのは、それがデフォルメの極地であり、またデフォルメというのは大変インパクトのある視覚表現であるからだと思っています。

また、ゲームというのはインターフェースの遊びであり、同時に、その進化の過程にはたゆまぬ工夫の歴史があります。

WEB制作に携わる我々は、極端にいうとブラウザの中でインターフェースを具現化することが仕事です。ゲーム内のインターフェースには最先端の工夫が詰まっていることが多いので、我々の仕事にとっても非常に参考になりますし、リアルタイムで体験しておくことがとても重要だと思っています。

正直、個人的には興味のある分野ではなかったソーシャルゲームも、当然目的に特化したインターフェースを持っているので、最近は興味深くプレイしています。

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例えば、初めてSimCityがiPhoneでリリースされた際、インターフェースがPCゲームのロジックで構築されていたため、単にプレイしづらいSimCityになっていました。

しかし、2013年に発表された続編のSimCity BuildItでは、見た目や「都市を育てて楽しむ」というテーマ自体はほかのシリーズと同じですが、システムもUIもスマホに最適化されており、プレイを通じて得られる快感が全く異なるものになっています。

これは開発会社が、ソーシャルゲームというものがどうあるべきかを徹底的に考え抜いた末の、工夫の賜物だと思っています。ほかのゲームでも、元々の世界観を上手く引き継ぎつつ、デバイスに併せてUI/UXを最適化するための工夫が見られるものは多く、とても勉強になります。

WEBの世界に話を持ってくると、たとえばPCのサイトでは画面上部にロゴやメニューがあることが多いのですが、スマホの場合は下に配置したほうが効果的であると言われています。これは、スマホのゲームで操作に必要なインターフェースが親指近くに配置されることが多いのと同じ原理です。

【ゲームを愛する人たちへのメッセージ】


少し前、仕事で他の企業に出入りしていた時期があったのですが、近くの席で一日中ヘッドセッドをしてゲームをプレイしているエンジニアがいました。

一見ただ遊んでいるだけに見えたし、実際単に遊んでるだけなんでしょうが(笑)、インターフェイスに没入し、そこから某かのフィードバックを得る作業に対して、営利企業がそれを労働として認めていることに感銘を受けました。業界にも依ると思いますが、そういった価値観が認められる世の中になってくれると嬉しいなと思います。

無駄だと思いながらどこか後ろめたい気持ちでゲームをプレイしている人もいれば、無駄だからやらないという人もいると思います。「ゲーム=非生産的」だと思われがちですが、特に僕と同じWEB業界にいる人には、あえてゲームと積極的に向き合って欲しいと願っています。

ゲームとは工夫の結晶です。そこは、我々のような職業を選んだ者にとっての、叡智とヒントに満ち溢れています。

ゲームの時間を作るために仕事を効率的にこなすという人もいますが、僕は面倒くさい人間なので、如何にゲームが仕事の役に立つのかを滔々と説明することで、堂々とその時間を勝ち得ています。みなさんも、僕を参考に、日々理論武装に励んでください(笑)!


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■濱田智氏 プロフィール


1977年6月23日北海道生まれ。筑波大学卒業。
株式会社CINRA テクニカルディレクター。
エンジニアとして早稲田大学やTOKYO FM、資生堂のWEBサイト制作を手がける。
その他、その音楽性が注目されるバンド『drawing4-5』のフロントマンとしても活動。
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