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第6回「グランツーリスモは、プロレーサーの世界への扉」日産・ニスモ(NISMO)レーシングドライバー ヤン・マーデンボロー選手

2016/03/18

GameWithのビジョンである「ゲームをより楽しめる世界を創る」ための活動のひとつとして、様々な分野の第一線で活躍する方々にゲームから学んだことについて語っていただく「私のゲーム履歴書」。

第6回目は、ゲームプレイヤーから本物のレーシングドライバーになる夢を叶えた、モータースポーツレースチーム「日産・ニスモ(NISMO)」所属のヤン・マーデンボロー(Jann Mardenborough)選手にお話を伺いました。

ヤン選手はイギリス・カーディフ育ちの24歳。2011年に開催されたプレイステーションソフト「グランツーリスモ」を用いてゲームプレイヤーから本物のレーシングドライバーの卵を選出する「GTアカデミー」のヨーロッパ大会に参加。

優勝者にはレーシングドライバーとしてデビューするチャンスが与えられるこの大会で、約9万名の参加者に競り勝って見事優勝されました。

その後、ドバイ24時間耐久レースでデビューし、FIAヨーロッパ・フォーミュラ3選手権やル・マン24時間レースなどに参戦し、今年2016年は日本のSUPER GTシリーズに年間フル参戦します。

レーシングドライバーとしてご活躍されているヤン選手。今回は、ゲームを通じて前途洋々な夢を叶えたその経緯と、ゲーム経験から得た現実のカーレースへの影響についてお話を伺います。

ゲームが、プロへの扉を開いてくれた。

私がゲームをやり始めたきっかけは、やはり「車」でした。

小さい頃に「MATCHBOX(マッチボックス)」という手に収まるサイズのミニカーで遊んでいたのですが、少し経ってからそのミニカーのレーシングゲームがプレイステーションソフトでリリースされているのを知ったんです。向かいの友達の家にプレイステーションがあったことから、ほぼ毎日通ってそのゲームで遊んでいました。

当時よく遊んでいたのが「グランツーリスモ1」というカーレーシングゲーム。それ以外にもシューティングゲームやサッカーゲームなどを弟と一緒にプレイしていました。

今でもたまにゲームで遊んだりもしていますよ。「グランツーリスモシリーズ」はもちろん、「コールオブデューティ」や「バトルフィールド4」、「デスティニー」などのシューティングゲームも好きですね。


ヤン選手_1

8歳くらいの時からテレビでもゲームでもカーレースに夢中になっていたので、自分も「プロのレーシングドライバーになりたい」という夢を持っていました。

地元のレース場に通って練習を始めたのですが、数年経ったある日、そのレース場が閉鎖されてしまい、カーレースを続けられる状況ではなくなってしまいました。そこでレーシングドライバーへの道は一度断たれてしまいました。

それからは、周りと同じように学校に通い、サッカーのクラブ活動に参加したりして過ごしていましたが、それでもなお続けていたのが「グランツーリスモ」だったんです。

何度もプレイして自分でも相当実力がついたと思った時に出会ったのが「GTアカデミー」でした。GTアカデミーは、優勝したら本物のレーシングドライバーになるチャンスが与えられます。数々のグランツーリスモの実力者がそのGTアカデミーに挑戦して、実際にプロのレーサーになっているのを知りました。

私は自分の実力がどれぐらいか試してみたかったし、再び自分自身の夢に挑戦することが出来ると確信し、19歳の時に応募を決めました。

「ゲームプレイヤー」と「本物のレーシングドライバー」の違い

GTアカデミーのヨーロッパ大会で予選通過し、その後、実際にレーサーとしての適性が試される様々なトレーニングに参加します。

私にとってこのトレーニングはとても過酷でした。車以外にも様々な乗り物に乗って適性を判断されます。例えば、飛行機にも乗って実際に操縦、アクロバット飛行をするというミッションもありました。

横に本物のパイロットがついていて、自動車教習学校のように様々な指示がそこから飛んできます。私は高いところが苦手なこともあって、すごく大変でした。

操縦スキルだけでなく、メンタルの強さも求められているのが本物のレーシングドライバーなんだとそこで感じました。

ゲームの世界と現実の世界で異なっている点は、まず「フィジカルトレーニング」でした。

ゲームでのレーサーはハンドルを握って運転するだけのシミュレーション要素が強いですが、現実ではそれに加えてレースに耐えうる体力が求められるので、海兵隊のようなトレーニングメニューをこなして泥汗まみれになることが多かったです。

さらに「視野の広さ」もゲームのようにスクリーン一点に集中していれば良いわけではなく、広く保たなければならないところも大変でした。

ヤン選手_2
プロのレーシングドライバーもシミュレーションマシーンをプレイしていますが、プロ用のシミュレーションマシーンはゲームよりも遥かに細かい設定が可能です。

例えば、「グランツーリスモ」のゲームではカーモデルを選択することは出来ても、個々のマシーンのチューニング範囲は限られています。プロレーサー用マシーンでは、より詳細なチューニングの他に気候や路面状況の設定を、エンジニアに調整してもらうことが出来ます。

こうして限りなく現実に近くしたバーチャル環境下でのレース練習を繰り返します。

私がゲームをプレイしていて良かったと思うのは、このバーチャルシミュレーション時です。バーチャルシミュレーションで選手はコースの予習などをするのですが、選手の中には振動や重力(G)などを感じないこのシミュレーションになかなか慣れることが出来ず、違和感を感じる人もいます。その点、私はゲーム出身であったので早く慣れることができました。

さらに、ゲームで学習したコーナーへの入り方や追い抜く方法などは現実に活かせることも多かったですね。

【ゲームを愛する人たちへのメッセージ】


私には昔からずっと「プロのレーシングドライバーになりたい」という夢がありました。その夢はゲームによって叶えることが出来ました。これから先の未来では、ゲームを通じて何か夢を叶える私のような人が多くなってくると思います。

そういった人たちは、バーチャルで出来たことが、現実ではそう上手くはいかないという壁にぶつかることも多いでしょう。

しかし、周りがなんと言おうと進み続けることが大切だと私は思います。何かを愛し、それを続けていくにあたって、抱き続けている熱い情熱があるのならあきらめず続けたほうがいい。

未来が確実でなくても、ぶれないでやり続けることで夢は手に入れられると私は思います。


ヤン選手_3

■ヤン・マーデンボロー(Jann Mardenborough) 選手プロフィール


1991年9月9日イギリス・カーディフ育ち。
8歳の頃から数年間カーレースに取り組むと同時に、プレイステーションソフト「グランツーリスモ」シリーズをプレイし続ける。
2011年に日産とソニーコンピューターエンターテイメントの協賛で開催された「GTアカデミー」ヨーロッパ大会にて約9万名の参加者の頂点に立つ。日産・NISMOチームのプロ・レーシングドライバーとしてドバイ24時間耐久レース(2012年)や、FIA ヨーロッパ・フォーミュラ3選手権(2013年)、ル・マン24時間レース(2014・15年)に参戦。2016年は日本のSUPER GT(GT300クラス)に「Nissan GT-R NISMO GT3」で年間フル参戦する。