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第5回「ゲームの本質は、作り手が設定したルールの中でいかに闘えるか」漫画家 うめ(小沢高広)氏

2016/02/03

GameWithのビジョンである「ゲームをより楽しめる世界を創る」ための活動のひとつとして、様々な分野の第一線で活躍する方々にゲームから学んだことについて語っていただく「私のゲーム履歴書」。

第5回目は、2014年にドラマ化もされた、ゲーム制作会社を舞台とした漫画『大東京トイボックス』を描いた漫画家ユニット「うめ」の小沢高広氏にお話を伺いました。

小沢氏は奥様である妹尾朝子氏とそれぞれシナリオと作画を分担した「うめ」名義として活動。第39回ちばてつや賞一般部門ちばてつや大賞を受賞し、『ちゃぶだいケンタ』にて連載デビュー。

その後、「サラリーマンを描け」という編集部の方針に対して、ゲーム制作会社で働く「ゲームの作り手」を描くことで見事に応えます。小さな頃に「ゲームを作る職業に憧れていた」と話す小沢氏のゲームとの出会いと、漫画家の視点からゲームに対する考えについてお話いただきました。

ゲームは作り手と闘うもの

子供のころは、まだ「ファミコン」はありませんでした。

初めて触った家庭用ゲーム機は「TV Game スポーツキング」というゲーム機。丸紅住宅販売というゲームとは無縁そうなメーカーから発売されていたマシンです。

たしか父親がどこかの忘年会でもらってきたものでしたね。ボールに見立てた四角いドットを、ラケットに見立てた棒で打ち返し続けるようなシンプルなゲームが何種類かプリインストールされてました。

ある日、大人同士がスカッシュをしているときに、僕がふと、付属の光線銃でボールを撃ったことがありました。僕としては、クレイ射撃の練習のつもりかなんかだったんでしょう。しかし、なんとボールが消えた。これは驚きました。

今思えば、バグですね。クレイ射撃以外のゲームでは不要のはずの「ボールを非表示にするルーチン」がオフになってなかったんだと思います。

この体験は強烈でした。正直ゲーム自体より、よく覚えています。「なんで!? どういう仕組みなの!?」と何度も何度もその行為を繰り返しました。今思えば、ゲームを作る側に対する好奇心のいちばん最初かもしれません。

ただそのときの体験は、そのままなにかにつながるということはなく、プレイヤーとしてゲームと関わっていくことになります。

小学校にあがるころが、ちょうど「スペースインベーダー」が流行した時期。学校ではもちろんゲームセンターに行くなんて禁止。

でも友達の家が「ゲーム喫茶」をやっていて、「友達の家に遊びに行く」という体で、ずいぶん遊ばせてもらいました。

ファミコンは、発売されてしばらくして僕も親に買ってもらいましたが、アーケードゲームのほうが好きでしたね。1ゲーム20円とかで遊べる駄菓子屋兼ゲームセンターによく友達と自転車で通ってました。学校にバレないように、自転車で遠くのお店まで行くのがコツでしたね(笑)


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そんなころ、ある本に出会います。すがやみつるさんの『こんにちはマイコン』というマンガです。

『ゲームセンターあらし』のキャラクタたちが、簡単なゲームを作る過程を通じて、プログラミング言語の「BASIC」を学ぶ、といった内容です。ここで頭の中で、何かがはじけた。

「ゲームって作れるんだ!人が作っているんだ!いままで遊んできたゲームぜんぶ!」という事実に気がついたんです。もちろん当たり前っちゃあ、当たり前のことなんですが、ゲームに対する姿勢が180度変わりました。

今までどおり遊んでいても、いつもどこかで「ゲームの作り手」を意識している。ゲームで遊ぶという行為が、たんなる遊びでなくゲームを通じて「作り手との真剣勝負」をしているような気分ですね。

「飾り」を取り除くと「ルール」がある

「スーパーマリオ」のステージ世界最速クリアや、「パックマン」のパーフェクトクリアが動画サイトなどに投稿され、話題になることがあります。これらのプレイには、スポーツの名プレイと同等の美しさがあります。

単に器用とか上手とか、そういう魅力ではない。いかにルール上での闘いを極めているかという点に魅力があるんだと思います。作り手が作ったルールの中で、全力を尽くす。

ゲームには、ストーリーや世界観、キャラクタの魅力というのもあります。でもそのあたりを魅せるのであれば、マンガのほうが向いているかもしれない。少なくともインタラクションがない分、作りやすいのは確実です。

でもルールはゲームにしかない。僕はゲームの本質は、あくまでルールにあると思います。

美しいルールに、少しでも美しいプレイでこたえる。それが作り手との闘いであり、究極において「ゲームをする」ということだ思います。

【ゲームを愛する人たちへのメッセージ】


もちろん「暇つぶし」としてゲームをやったっていいんです。僕もしょっちゅうやります。でも、ひとつのゲームを突き抜けて極めてみると、違った世界が見えてきます。

僕は、社会人になってから「セガラリー」というレーシングゲームでスコアを早めるためだけに、禁酒を続けていたことがありました(笑)。少しでも飲んでしまうと、ラップライムが0.1秒くらい落ちるんですよ。

結果、ドリームキャスト版では車種別でしたが全国で4位まで上りつめることができました。1位との差は、100分の数秒だったので、その点は悔しいのですが、それでもトップにあと一歩まで迫られたという経験は、すごくいい経験でした。

ゲームをすることの大きなメリットにひとつですね。これは剣道や茶道といった「〜道」といったものに限りなく近い。ルールに従って、つきぬけることで、考え方や見える世界が変わる経験です。

もしゲームをすることに「時間を無駄にする」後ろめたさを感じている人がいたら、そんな風に「作り手との闘い」を真剣に楽しむという視点を持ってみることをおすすめしたいです。真剣に作られたゲームなら、真剣に遊べば、かならずこたえてくれます。


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■小沢高広氏プロフィール


東京生まれ。小学生のころからコンピュータやゲームに親しむ。2000年、作画の妹尾朝子とマンガユニット“うめ”を結成。
2001年、『ちゃぶだいケンタ』でデビュー。2010年、日本のマンガ家として初めてアマゾンキンドルサービスから日本語マンガ『青空ファインダーロック』を出版したとして話題となる。その後、『大東京トイボックス』がマンガ大賞2012で第2位を獲得。現在、ビッグコミックスペリオールで『STEVES(スティーブズ)』連載中。


http://honcierge.jp/interviews/10/interview_contents/29より引用